研究・開発の窓 COLUMN
研究・開発の窓
X線回折実験でヒト角層の分子レベルの構造と化粧品・医薬品の作用機序を解明
名古屋産業科学研究所 八田一郎 上席研究員皮膚の最上層部にある角層は、バリア機能と保湿機能に関して重要な役割を担っている。名古屋産業科学研究所上席研究員の八田一郎氏(名古屋大学名誉教授)は、ヒト角層の分子レベルの構造解析と角層に対する化粧品や医薬品の作用機序解明で大きな足跡を残した研究者だ。 八田氏のもともとの専門分野は固体物理。1967年に提出した東京工業大学大学院の博士論文のテーマは誘電体の相転移であり、酸化物超伝導体の発見でノーベル賞を受賞したIBMチューリッ...
創薬ツールから生殖医療まで、使いやすいMPSの開発を推進
東海大学 木村啓志教授創薬や再生・細胞医療の分野で活用が期待されるMicrophysiological system (MPS=生体模倣システム)。東海大学の木村啓志教授(マイクロ・ナノ研究開発センター、工学部生物工学科・機械工学科)は、その基盤技術であるマイクロ流体デバイスの研究者で、「使いやすさ」や「汎用性」を重視したMPSデバイスの開発を進めている。 木村教授がもともと目指していたのはロボット工学の研究者。だが、まだ学部生だった2000年代...
ヒトiPS細胞からMPS搭載に最適な肝細胞・小腸細胞を効率的に培養
大阪大学大学院 薬学研究科 水口裕之教授(分子生物学分野)MPS(Micro physiological Systems:生体模倣システム)はマイクロサイズのデバイスと培養細胞を組み合わせて臓器や生体の機能を模倣するシステムで、特に肝臓や小腸の機能を模したMPSモデルは医薬品の薬効や毒性、薬物動態を評価する創薬支援ツールとして期待されている。しかしMPSデバイスに比べ、MPSに搭載する細胞に関しては開発の遅れも指摘されてきた。 大阪大学大学院の水口裕之教授(薬学研究科・分子生物学分...
肝細胞の3次元培養とMPSの技術開発で、病態解明や創薬を支援する
崇城大学 生物生命学部 石田誠一教授(生物生命学科 応用生命科学コース)薬物代謝を担う肝臓は、創薬研究でも重要な位置を占める。崇城大学の石田誠一教授は前職の国立医薬品食品衛生研究所時代から細胞の3次元培養による組織再構築を研究テーマとし、特に肝臓組織の再構築では多くの研究実績を積み重ねてきた。最近ではMPS(Micro physiological Systems:生体模倣システム)の開発を含めて、新たな視点で肝臓病の病態解明や創薬につながる支援ツールの研究に取り組んでいる。 肝臓の細胞には全体の...
製薬企業ニーズに応える国産生体模倣システムを製品化し、日本発の創薬を支援
筑波大学 生命環境学群 伊藤弓弦教授(生命地球科学研究群 生命環境系)動物実験では問題がなかったにもかかわらず、治験では重篤な副作用が発現することがある。データ蓄積の乏しい新たな創薬モダリティでは特にその傾向が強く、前臨床段階で毒性や有効性を精緻に予測する技術の開発が求められている。 筑波大学の伊藤弓弦教授を研究代表者とするAMEDの「製品化戦略に基づいた、国産MPS(Microphysiological System=生体模倣システム)による創薬プラットフォームの実証研究」は、まさに製薬企業...
がんや自己免疫疾患の発症にも関わる「直鎖状ユビキチン鎖」を発見
京都大学大学院医学研究科 岩井一宏教授(細胞機能制御学分野)ユビキチンは、タンパク質の翻訳後修飾系の一つであるが、多くの人はタンパク質の分解に関わるユビキチン―プロテアソームシステムを想起することだろう。だが、現在では、ユビキチン修飾系はタンパク質の分解のみならず、さまざまな生体機能の制御系として機能していることが分かってきている。京都大学大学院医学研究科の岩井一宏教授(細胞機能制御学分野)らが発見した、特異な構造のユビキチン「直鎖状ユビキチン鎖」は、がんや自己免疫疾患の発症にも関与...