研究・開発の窓 COLUMN
研究・開発の窓
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ヒトiPS細胞からMPS搭載に最適な肝細胞・小腸細胞を効率的に培養
大阪大学大学院 薬学研究科 水口裕之教授(分子生物学分野)MPS(Micro physiological Systems:生体模倣システム)はマイクロサイズのデバイスと培養細胞を組み合わせて臓器や生体の機能を模倣するシステムで、特に肝臓や小腸の機能を模したMPSモデルは医薬品の薬効や毒性、薬物動態を評価する創薬支援ツールとして期待されている。しかしMPSデバイスに比べ、MPSに搭載する細胞に関しては開発の遅れも指摘されてきた。 大阪大学大学院の水口裕之教授(薬学研究科・分子生物学分...
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肝細胞の3次元培養とMPSの技術開発で、病態解明や創薬を支援する
崇城大学 生物生命学部 石田誠一教授(生物生命学科 応用生命科学コース)薬物代謝を担う肝臓は、創薬研究でも重要な位置を占める。崇城大学の石田誠一教授は前職の国立医薬品食品衛生研究所時代から細胞の3次元培養による組織再構築を研究テーマとし、特に肝臓組織の再構築では多くの研究実績を積み重ねてきた。最近ではMPS(Micro physiological Systems:生体模倣システム)の開発を含めて、新たな視点で肝臓病の病態解明や創薬につながる支援ツールの研究に取り組んでいる。 肝臓の細胞には全体の...
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製薬企業ニーズに応える国産生体模倣システムを製品化し、日本発の創薬を支援
筑波大学 生命環境学群 伊藤弓弦教授(生命地球科学研究群 生命環境系)動物実験では問題がなかったにもかかわらず、治験では重篤な副作用が発現することがある。データ蓄積の乏しい新たな創薬モダリティでは特にその傾向が強く、前臨床段階で毒性や有効性を精緻に予測する技術の開発が求められている。 筑波大学の伊藤弓弦教授を研究代表者とするAMEDの「製品化戦略に基づいた、国産MPS(Microphysiological System=生体模倣システム)による創薬プラットフォームの実証研究」は、まさに製薬企業...
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がんや自己免疫疾患の発症にも関わる「直鎖状ユビキチン鎖」を発見
京都大学大学院医学研究科 岩井一宏教授(細胞機能制御学分野)ユビキチンは、タンパク質の翻訳後修飾系の一つであるが、多くの人はタンパク質の分解に関わるユビキチン―プロテアソームシステムを想起することだろう。だが、現在では、ユビキチン修飾系はタンパク質の分解のみならず、さまざまな生体機能の制御系として機能していることが分かってきている。京都大学大学院医学研究科の岩井一宏教授(細胞機能制御学分野)らが発見した、特異な構造のユビキチン「直鎖状ユビキチン鎖」は、がんや自己免疫疾患の発症にも関与...
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ラマン顕微鏡で細胞組織内分子を可視化する
大阪大学大学院工学研究科 藤田克昌教授、 産総研先端フォトニクス・バイオセンシングオープンイノベーションラボラトリ 藤田聡史副ラボ長2022年8月、国の研究機関である国立研究開発法人産業技術総合研究所(産総研)と大阪大学の共同研究により、ラマン顕微鏡(写真)という技術を用いて、細胞を壊さず、標識することもなく、肝細胞内の薬物代謝活性を可視化することに成功したという成果が発表された。ラマン顕微鏡が、創薬や診断技術、再生医療などの生命科学分野の技術開発に貢献する可能性を実証した研究成果として、脚光を浴びている。 大阪大学吹田キャンパスの...
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血液脳関門を再現するヒトのミニブレインを開発
東京薬科大学薬学部 降幡知巳教授(医療薬学科個別化薬物治療学教室)血液脳関門は、今も脳疾患治療薬などを開発する上で分厚い壁となっている。東京薬科大学薬学部の降幡知巳教授(医療薬学科個別化薬物治療学教室)は、オリジナルのヒト不死化細胞を使って、ミクロサイズの血液脳関門の生体模倣システムの開発に成功し、国内外の研究機関や製薬企業から大きな注目を浴びている。生体外で幹細胞などから3次元的に培養した臓器モデルは、通常、“オルガノイド”と呼ばれるが、降幡教授が作製したヒトの脳モデルはオルガノイドとは...