研究・開発の窓 COLUMN
研究・開発の窓
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ヒト手術残余検体を用いた消化管の薬物吸収評価系を確立する
北里大学薬学部 前田和哉教授(薬剤学教室)経口薬を開発する上で、消化管からの薬物吸収性を評価することは極めて重要だ。しかし、これまで、創薬の過程において繁用されるin vitro実験系は大腸がん由来の細胞株を用いたものであり、実際に薬物吸収が行われる部位である小腸の正常細胞は用いられていなかった。北里大学の前田和哉教授(薬学部薬剤学教室)は、ヒト小腸の手術残余検体を活用した実験系を構築し、より精度の高い薬物吸収性予測を実現する研究を進めている。前田教授の専門分野は薬...
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プロスタグランジン産生機構の研究から、新たなNSAIDsや抗がん薬の標的を見つける
昭和大学薬学部 原 俊太郎教授(社会健康薬学講座衛生薬学部門)NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)は、アラキドン酸の代謝経路で働くシクロオキシゲナーゼ(COX)を阻害してプロスタグランジン類の産生を抑制し、解熱、鎮痛、抗炎症効果を発揮する薬だ。昭和大学薬学部の原俊太郎教授(社会健康薬学講座衛生薬学部門)らは、今日的な手法でプロスタグランジン産生機構の研究を推し進め、副作用の少ないNSAIDsや、新しい作用を有する薬の開発につながる創薬標的を見出す研究を続けている。衛生薬学は、疾病予防...
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34万種の公的化合物ライブラリーとスクリーニング支援で、アカデミア発の創薬を推進する
東京大学大学院薬学系研究科附属創薬機構・小島宏建特任教授東京大学は、2006年から公的な化合物ライブラリーとスクリーニング施設を管理・運営している。現在では34万種の化合物を所蔵するライブラリーとなっているが、熱意ある創薬研究者には、産学官いずれの組織に所属しているかを問わず、誰にでも開放していることが大きな特徴だ。副機構長を務める小島宏建特任教授に、公的化合物ライブラリーの重要性や同機構が展開する創薬支援事業について聞いた。小島特任教授のもともとの研究テーマは、バイオイメージン...
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薬物の皮内動態研究をベースに、IoTと連動した新しい経皮吸収型DDS製剤を研究
城西大学薬学部 藤堂浩明准教授(薬粧品動態制御学研究室)城西大学薬学部の薬粧品動態制御学研究室は、皮膚を介した医薬品や化粧品の体内動態研究やその知見を応用した薬物送達システム(DDS)の研究で知られている。同研究室を率いる藤堂浩明准教授は、「長年、医薬品を皮膚に塗布あるいは貼付した際に、薬物が皮膚の中をどれぐらいの速度で浸透もしくは透過するのかといった経皮吸収の研究を行ってきたが、薬学6年制がスタートしたころに前任の杉林堅次教授(現在、城西国際大学学長)より大学として特徴のある研...
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細胞を使ったものづくり、独自の臓器設計技術で日本の新たな産業を切り開く
横浜市立大学大学院 小島伸彦准教授(生命ナノシステム科学研究科・生命環境システム科学専攻・再生生物学研究室)再生医療や新しい創薬基盤には、ヒトや動物の細胞から臓器をデザインする技術が欠かせない。横浜市立大学大学院で再生生物学研究室を主宰する小島伸彦准教授は、スフェロイドやオルガノイドと呼ばれるような、いわゆる「細胞凝集体」の設計技術開発、「細胞を使ったものづくり」を研究テーマとしている。小島准教授は、「最終的には本物そっくりの臓器を創り、移植医療や創薬に役立てることが目標だが、同時に本物そっくりでなくても世の中の役に立つものが創れ...
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血液脳関門や腎臓・肝臓のトランスポーター研究を進め、薬物動態や相互作用を予測する
楠原洋之 東京大学大学院教授東京大学大学院の楠原洋之教授(薬学系研究科・分子薬物動態学)は、血液脳関門や肝臓、腎臓に存在するトランスポーターを介した薬物の生体膜透過機構の研究、それらを基盤とした薬物動態予測法および薬物相互作用予測法の研究で知られる。楠原教授は「薬は正しい組織に正しい量が届いて、初めて正しい効果を発揮するという考え方と、生体内のさまざまなパラメーターを用いて、血液や組織への薬物移行を数学で表現していく手法に魅力を感じ、杉山雄一先生(東京...