第３回「細胞の冬眠」

1. 

   「博士、細胞を凍結したいのですが、注意することはありますか？」

2. 

   「細胞を凍結保存するときに一番大切なのは、細胞の状態だね。 対数増殖期の細胞を凍結しないと戻りが悪くなるね。 具体的には、約８０％シートのときに培地を交換して翌日に凍結するといいよ。」

3. 

   「温度についてはどうですか？」

4. 

   「温度については１～３分間で１度ずつ落としていくのがよいとされているが、特殊な装置が必要になるので一般的には行いにくい。そこで施設ごとに色々な方法が考えられているが、うちでは氷中に５分間、－２０度に３０分～５０分、－８０度で１２時間ほど静置してから液体窒素に移すという方法をとっているよ。」

5. 

   「なぜ、ゆっくり凍らすのですか。」

6. 

   「簡単に言うと、緩やかな氷の結晶をつくるためだよ。ガラス化法は別として、急速に凍結すると鋭敏な結晶が出来てしまい、それが細胞膜を傷めるんだ。」

7. 

   「それでは、－２０度や－８０度では保存ができないのですか。」

8. 

   「－２０度や－８０度でも細胞の代謝は緩やかながら働いていると考えられている。－２０度で、２～３日ぐらい、－８０度だと半年から１年ぐらいしか保存できないよ。」

9. 

   「えっ。凍結していても代謝が進むのですか。それって熊なんかの冬眠と同じ状態じゃないですか。」

10. 

    「その通り。だから元気の良いときにたくさん栄養をあげて細胞を太らせるんだ。」

11. 

    「わかりました。さっそく細胞に栄養をあげてきます。」

12. 

    「・・・」

13. 皆さんも適度に細胞を太らせてよい凍結を。
    いずれにしても太らせすぎ（過増殖）はだめですよ。