細胞培養基礎講座 COURSE
細胞培養基礎講座は、 培養の第一人者バイ博士のもとに弟子入りした陽助手が、 日々の細胞培養に関する疑問を博士から教わります。
第5回「E・H?」
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「博士、このカタログに載っているE・Hってなんですか?」
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「いいエッチだと。何を聞くんだ!変なカタログを見るんじゃない!」
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「博士、勘違いしないでください。私は、培地のカタログにMEM-EとかHとか記載があるので、どんな意味かをお聞きしたのですが…」
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「イヤーごめんごめん。
君の日頃の言動からつい…。(赤面するバイ博士)
MEM培地などのEは、バッファー系がEarle(アール)ベースのもので、5%炭酸ガス下で平衡するように設定されている培地なんだ。HはバッファーがHanksベースのもので、通常の大気で平衡になるように設定されているんだ。」 -
「この2つはどのように使い分けるのですか?」
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「インキュベーターの性能により使い分けるのが基本だが、pHの変化に弱い細胞、例えば正常2倍体の細胞などは、継代時にHanksベースのものを使用すると生着率がよくなるし、植え込み細胞数が少ない場合や増殖が遅い細胞などに使用すると、良いようだね。」
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「じゃーHanksベースのMEMを使用すれば、炭酸ガスインキュベータが必要なくなるし、弱い細胞も培養しやすくなって便利ですね。」
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「そうなんだが、HanksベースのMEMは、リン酸バッファーと重曹バッファーの2重緩衝系を基本としているので、細胞が培地中のリン酸を消費しない限りはpHの変動がEarle系に比べて少ないので良いのだが、細胞が活発に増殖し、リン酸が細胞により代謝されると、比較的早く緩衝能力が減少するという欠点をもっている。したがって増殖の早い細胞では、培地交換を頻繁におこなう必要があるんだ。」
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「そうなんですか。」
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「あと、Hanksベースの培地を使用するときは、炭酸ガスインキュベータで使用しないこと。これはL-15培地にも言えることだが、これら大気中で平衡となるバッファー系を使用する際は注意しないと、培地がすぐ黄色くなるよ。どうしても炭酸ガスインキュベータで使用しなくてはいけないのであれば密栓系で行うことだね。」
- 皆さんも、細胞の状態に応じてEarleとHanksを使い分けてうまく細胞を培養してくださいね。