細胞培養基礎講座 COURSE
細胞培養基礎講座は、 培養の第一人者バイ博士のもとに弟子入りした陽助手が、 日々の細胞培養に関する疑問を博士から教わります。
第6回「細胞がシングルセルにならない?」
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「博士、細胞がなかなかシングルセルにならないのですが…。トリプシンの処理時間を長くしても同じなんです。」
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「トリプシン処理の時間は、細胞の状態によって変わるんだ。細胞によって違うけれど、一般的に細胞の状態が悪いときほどトリプシン処理の時間が長くなるね。あと、細胞がアグルということだけど、細胞を過増殖させるとアグリやすくなるね。」
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「一度固まった細胞は、シングルセルにすることができるのですか?」
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「一度固まった細胞は、トリプシンだけでシングルにしようとして、長くトリプシンをかけると、余計に固まることが多いね。その場合は、トリプシンだけで剥がそうとせず、ある程度細胞と細胞の間が開いてきて、細胞が円球化しつつあれば、トリプシンを中和し、21G程度の注射針を使ってピペッティングで剥がすと良いようだね。」
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「細胞はダメージを受けませんか?」
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「多少のダメージは受けるけれど、トリプシン処理を長くするほうがダメージは大きいね。」
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「ラバーポリスマンやセルスクレイパーはどうですか。」
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「ラバーポリスマンやセルスクレイパーだけだと固まるので、軽くトリプシンをかけた後にこれらを使用すると良いね。」
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「どうして細胞はすぐ固まるのでしょう?」
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「悪い条件になればなるほど固まることが多いように思うね。たぶん固まることでダメージを和らげるのではないかな。1本の矢より3本の矢だよ。」
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「それを言うなら、1個のダンゴより3個のダンゴですよ。」
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「・・・」
- 皆さんも、細胞の状態に応じてトリプシンの処理時間を変えて良い状態を維持しましょう。