細胞培養基礎講座 COURSE
細胞培養基礎講座は、 培養の第一人者バイ博士のもとに弟子入りした陽助手が、 日々の細胞培養に関する疑問を博士から教わります。
第9回「トリプシンとEDTA」
-
「博士、接着細胞を容器から剥がすのに使うトリプシンの溶液にはEDTAが入っていることが多いようですが、何か理由はあるのですか?」
-
「カルシウムイオンとマグネシウムイオンがあると、細胞が剥がれにくいんだ。EDTAは、カルシウムイオンとマグネシウムイオンを捕まえて働かなくすること(キレートという)ができる物質で、いわばトリプシンが能力を発揮しやすいように助けてくれる助手のような働きがあるんだ。」
-
「PBS(-)にカルシウムイオンとマグネシウムイオンが含まれていないのは同じ理由ですか。」
-
「その通り。培養液中にはカルシウムイオンもマグネシウムイオンも豊富に含まれているし、添加している血清にもトリプシンの阻害剤が含まれている。PBS(-)でこれらトリプシンを阻害する物質をある程度除去しておかないとEDTAだけでは十分にこれらのイオンをキレートできないんだ。」
-
「血清を添加した培地にもたくさんのトリプシン阻害物質が含まれているんですね。だからトリプシンで細胞を剥がしたあと、血清を添加した培地を入れるのですか?」
-
「トリプシンは、タンパク質を分解する作用があるので、あまり長く作用させると細胞膜が傷んでしまう。そこで、ある程度細胞が容器から剥がれたら血清を添加した培地を入れてトリプシンの働きを止めてしまうんだ。また、血清には細胞の保護作用もあるので傷んだ細胞も保護してくれるんだ。」
-
「僕は、トリプシンを培地で薄めることによってトリプシンの働きを止めると思っていました。トリプシンとEDTAは、まるで僕と博士のようですね。僕が博士のアシスタントをして、博士が研究しやすいようにサポートしているのですから。」
-
君はどちらかというと、カルシウムイオンなんだが・・・。という気持ちをこらえながら「そうだね。これからもサポート頼むよ。」
- D-PBS(-)は、PBSタブレット(BNDSBN200:㈱ケー・エー・シー)が便利ですよ。