細胞培養基礎講座 COURSE
細胞培養基礎講座は、 培養の第一人者バイ博士のもとに弟子入りした陽助手が、 日々の細胞培養に関する疑問を博士から教わります。
第11回「トリプシンの反応時間」
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「博士、最近トリプシンで細胞を剥がす時に、細胞が剥がれにくく困っているのですが、何か原因はありますか?」
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「まず、トリプシンの失活を疑ってみよう。トリプシンは4℃で約1ヶ月程度しかもたない。新しくトリプシンを作ってみて同様に剥がれが悪いか確かめてみよう。」
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「そう思って新しく作ってみたのですがやはり剥がれが悪いのです。」
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「それなら、細胞自体の状態が悪くなっている可能性があるね。」
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「えっ。細胞の状態が悪くなると剥がれが悪くなるのですか?状態が良いほうが容器への接着が良いので、剥がれにくくなる様な気がするのですが。」
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「細胞をトリプシン処理すると球状になるのは、トリプシンによって切断された部分を保護するため、細胞が球状になってトリプシンとの接着面を少なくするためと私は考えている。だから状態が良い時ほど細胞の動きが活発なのでトリプシンの切断にもすばやく反応できるんだ。」
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「そうなんですか。ところで、状態の悪くなった細胞を元気にするにはどうすれば良いのですか。」
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「それは・・・。いろいろ細胞によって違うので株式会社ケー・エー・シーに相談してみたら良いよ。ただ、私なら一度悪くなった細胞を元気にするよりも、若くて元気な細胞を凍結から戻して使うけどね。」
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「つまり老化がトリプシン処理時間に影響する1つのファクターなんですね。老化するとあらゆる面で反応が悪くなりますから。例えば危険を感じたら博士より私の方が早く反応できますよね。だって僕のほうが博士より半分も若いんだから。」
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「確かに同時に危険を感じたら君には負けるだろう。でも君は危険なことを危険と感じることができないだろ。この前もきれいに磨いた玄関のガラスに頭をぶつけていたじゃあないか。」
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「あれは、あまりにガラスがきれいなので、玄関が開いていると思って…。」
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「やっぱり君だったのか。犯人が見つからないので困っていたんだ。修理代は給料から引いておくからね。」
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「ずるい。誘導尋問だ!」
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「正直に言わないからだよ。若さより経験。若ければ良いということもないよ。」
- ケー・エー・シーでは、トリプシン処理を、室温、顕鏡下で実施することを勧めています。