細胞培養基礎講座 COURSE
細胞培養基礎講座は、 培養の第一人者バイ博士のもとに弟子入りした陽助手が、 日々の細胞培養に関する疑問を博士から教わります。
第21回「ESの凍結・融解」
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「博士、ようやくES細胞が順調に増殖するようになりましたので、 凍結したいのですが、何か気を付けることはありますか?」
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「特に、普通の細胞と変らないのだが継代のときと同じように、 必ずシングルセルにすることが大切だね。凝集したままで凍結すると、 戻りが悪いからね。」
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「では、継代の時と同じくピペッティングでシングルセルにして手早く凍結ですね。凍結する際の温度も、除々に落とせば良いですね。」
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「その通り。」
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「融解の時も、普通の細胞と同じですか?」
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「細胞を融解するのは同じで良いのだが、 遠心をかける前には少し違う操作を行うんだ。 普通の細胞だと、融解細胞の浮遊液を10倍量のPBSで希釈して遠心するけど、 ES細胞の場合には、まず1mLの培地を融解細胞の浮遊液に添加して1分間静置、 その後2mLの培地を添加して1分間静置、4mLの培地を添加して1分間静置とゆっくりとボリュームを増やしてから遠心するんだ。」
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「普通の細胞と同じ方法なら、どうなるのですか?」
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「きちんと調べた訳ではないんだが、 経験的に細胞の生着率が悪くなるように感じるね。」
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「環境の変化には弱いのですね。」
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「そうなんだ。培地などを交換するときも必ず室温まで暖めてから使用することも大切だよ。」
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「わかりました。できるだけマイルドに扱います。 博士もこれからトイレやお風呂に入る時は気をつけてくださいね。 温度が急激に変わると危ないですから。」
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「そんなの大丈夫だよ。」
- と言いながら、後日、お風呂暖房装置のカタログが机にあったバイ博士。
実は気にしているようです。(2014年当時の知見を元に作成しました。)